でんぱの部屋(復刻版)

漆黒の闇。
画面が徐々に明るくなってくると、巨大な瞳のアップが画面いっぱいに映る。
瞳が瞬きするが、徐々に顔がアップになる。
ようやくその瞳の持ち主が分かる。
彼女は、1年壬申組のクラス代表エレクトラ・ウェイブ。
あいかわらずの無表情のまま、ADに後ろから羽交い締めにされて、ずるずると引きずられていき、画面中央にあるソファーに放り投げられた。

タイトルが画面に登場。

「でんぱの部屋」

画面右にエレクトラが座り、右手には眼の辺りまで前髪を伸ばした小柄な少女が座っている。

エレクトラ(以降「エ」):今日のお客さんはベッキーです。
レベッカ・大庭(以下「ベ」):……時候の挨拶とか私の紹介もなしにいきなりそれかい……。あいかわらずだな、エリー。
エ:はっ、私を親しげに愛称で呼ぶあなたは誰?
ベ:……いつものことだが今日も弾けてるな、エリー。
エ:今日は穏やかだから。
ベ:何が?
エ:ささ、おじいさんは奥に。
ベ:無視か?!それにじーさんって誰だ、おい。
エ:おじいさんはベッキーの後ろにいるお爺さんです。おばあさんは天井の隅からこっちを覗き込んでいます。
ベ:……やなばーさんだな。
エ:いえ、結構気さくないいお婆さんだと思いますよ。
ベ:なんで分かる?
エ:こっちのほうを見ながらケタケタ嗤っています。
ベ:(天井の隅に気味悪そうな視線を動かす)……まぁいいや、じーさんとばーさんは。今日は何の用?
エ:とりあえず適当に知ってる奴を連れてきて、なんかくっちゃべってろ……と言ってました。
ベ:誰が?
エ:(指を差しながら)あっちにいるディレクターさんです。
ベ:ほ〜〜、あいつか。

(ディレクター隠れる)

ベ:つまり、トーク番組なのか、エリー。
エ:はっ、ベッキー、超能力者?それともNSAから来たヒットマン?!
ベ:エリー、あいかわらずで何よりだ。でも私は、超能力者でもヒットマンでもなければ、モーリタニアの大統領でもないぞ。エリーに呼ばれてのこのこ顔を出した、馬鹿な博奕打ちだ。
エ:自分のことを馬鹿だと言うあなたは、きっと天才ね!そう、犯人は貴女だったのね!!
ベ:……その展開は読めなかったな。(向かいにいるADに向かって)トーク番組なんだろ、コレ。

(AD頷く)

エ:じっちゃんの名に賭けて、貴女には弁護士をよぶ権利がありましたが、土星にかわって滅亡ヨ。
ベ:……根本的な所に問題があるような気がするぞ、この番組。
エ:で、ベッキー
ベ:お、やっと帰ってきたな。
エ:なんでここにいるの?
ベ:(エリーに肩を掴んで激しく揺さぶりながら)は・や・く・か・え・っ・て・こ〜〜いっ!!!
エ:そうでした、私が呼んだんでした(ガクガク揺れている)。
ベ:(肩で息をしている)今度こそ大丈夫だな、ほんと〜に大丈夫だな。
エ:よっぎー君がベッキーを呼んでおけば大丈夫と言っていました。
ベ:まぁ、ある意味大丈夫だったんだろうな。激しく疲れた気もするけど……。
エ:それでは、また来週ぅ〜〜。
ベ:待て。
エ:はい?
ベ:本当に終わりか?
エ:ウソです。
ベ:……。
エ:あ、ベッキー恐い。
ベ:……。
エ:(ちょっと焦っているらしい)では、ベッキーに質問です。
ベ:唐突だが、まぁトーク番組らしくなってきたな。で、なんだい、エリー。
エ:ジョンとアリスが、3ポンド持ってパーラーにリンゴを2つ買いにいきました。
ベ:……。
エ:さぁ、どうでしょう。
ベ:なぁ、エリー。
エ:なぁに、ベッキー
ベ:それはクイズ番組じゃないのか?
エ:……そうかもしれないわね。
ベ:それに、その質問にどうやって答えればいいんだい?
エ:どこかおかしかった?
ベ:日本語的にかなりおかしかった。
エ:何処が??ベッキー日本語詳しいの?
ベ:なにせ、モナコ生まれの京都育ちなんでな。どっちかって言うと、京都にいた間の方が長いし。
エ:キョートって言うと、祇園とか舞子さんとかいるとこだね。
ベ:なんで花街絡みかなぁ……。普通は、寺とか言うんだけどなぁ。まぁ、舞子さんのことをゲイシャって言って喜ぶのはいるけど。
エ:ん〜、ベッキーどっちかっていうと日本人みたいな所あるよね。
ベ:どんなところが?
エ:チョッパースティック使うの上手いし、フラワーカードとかマージャンも強いし。
ベ:箸が使えるのは日本人らしいだろーけど、花札麻雀は違うと思うぞ。
エ:背が低いのも日本人。
ベ:……喧嘩売ってる?
エ:でも、ちっちゃい……。(ベッキーにでこピンされる)Ouch!
ベ:エリーが大き過ぎるんだ。まぁ、確かに、ちょっとは小さい…けど、な。
エ:ホントの事言っただけなのに、でこピンされたぁ。(またでこピン)うぅ〜。
ベ:本当の事でも言わない方がいいんこともあるんだ。まぁ、ようやっとトーク番組らしくなってきたけどな。
エ:うぅ〜、こんな痛いのトーク番組じゃないよぉ……ねぇよっぎー君。
ベ:よっぎー君って何モンなんだ?よく話してるよな。
エ:よっぎー君はよっぎー君です。
ベ:ん〜。まぁいいか。聞いてどうなるもんでもないしな。
エ:世の中には、知らないほうがいい事もあるしね(ボソッ)
ベ:何か言った?
エ:うぅん、別に。

<CM>
ご〜ま〜りそ〜ん
ご〜ま〜りそ〜ん
ご〜ま〜りそ〜ん
ご〜ま〜りそ〜ん


アイキャッチ
エレクトラ・ウェイブのぉ」
『で・ん・ぱ・の・部・屋』


エ:……と会話も弾んできたところで、お友達の紹介をしてもらいましょう。
ベ:……そう言う番組だったのか、これ。
エ:世界に広げよう、天使の、輪っ!!
ベ:のっけから間違ってるしよ……。
エ:苛々するのは、キューティクル不足の証拠です。そんなベッキーには、この磯臭いもずく酢をどうぞ。
ベ:激しく間違ってるって……。まぁ、もずくは貰っとくけど。あ、変な薬入れるな!
エ:健康にいいのに……
ベ:何を入れた?
エ:大丈夫。
ベ:何が?
エ:ちょっと天使の囀が聞こえる程度だから。
ベ:できれば、何も聞こえないのがいいんだけど……。
エ:そういう上級者用のは、持ち合わせが……。
ベ:無理して入れなくていいから。ところで、間に入ったCM、何のCMだ?
エ:ヒント、数字。
ベ:最近のCMは、ヒントがないと分からないものなのか?
エ:世界情勢は混迷の度を深めつつあるのであった。
ベ:どっかのドラマのエンディングじゃないんだから。
エ:続く。
ベ:続かなくていい!で、なんのCMなんだ?
エ:鷲野ひかるは、このCMソングのCDもしくは音楽ファイルを探しています。持っている方、連絡してね。
ベ:鷲野ひかるって誰だ?
エ:よっぎー君がそう言うように言ってました。
ベ:また、よっぎー君か。
エ:よっぎー君は、私のお友達です。とっても気さくな方なんですよ。
ベ:ほぉ。さっきは知らなくてもいいことがあるって言ってたのに。
エ:……。
ベ:どうした?
エ:……。
ベ:おい?
エ:……では、恒例の視聴者質問コーナーっっ!!!
ベ:(胸を押さえている)……びっくりした。って、おい、第1回じゃなかったのか、この番組。
エ:細かい事を気にしていると、よいローマ法王になれないとグロムイコ元外相も言ってました。
ベ:嘘言ってんじゃない。
エ:……バティストゥータだっけ??
ベ:……あたしが悪かった。で、質問って何?(かなり疲れ切っている様子)
エ:あ、はい、質問質問。まず最初のお便り。レドモンドのビル君からの質問です。
ベ:レドモンドのビル?誰だ?
エ:えっと、ジョンとアリスが3ポンド持ってパーラーへラズベリーとマンゴーを買いに行きました。
ベ:……オイ(汗)
エ:さぁ、どうでしょう。
ベ:さっきと同じか?!ここまで引っ張って、それか?(怒っている)
エ:違うよぉ。買うもの変わってるし……。
ベ:全然変わらねぇっっーの!!
エ:拒否権発動ですか?
ベ:はぁ????
エ:このコーナーでは、私の質問にだいたい3回パスできます。
ベ:……だいたい?
エ:小数点およそ第1位で四捨五入。
ベ:……(12秒経過)パス。
エ:早くもパスですか?本当にいいんですかぁぁぁ??
ベ:本当も何もパス!パスったらパスだっ!!
エ:……ファイナルアンサー?
ベ:さっさと話を進めろっ!!!
エ:怒んないでよぉ……。じゃぁ、次の質問。中国の江沢民さんからのお便りです。
ベ:嘘つけ。
エ:ベッキーの身長と体重を教えて下さい。
ベ:―――喧嘩売ってる?もしかして。
エ:私ぢゃないよぉ。ほら、手紙、手紙よぉ。
ベ:……。
エ:それに喧嘩売るんだったら、スリーサイズ聞くって。

(エリー、ベッキーにポカポカなぐられている)

エ:ぱぎゅぅ〜〜。……痛いの。
ベ:パス、次。
エ:〜〜。次の質問です。野々宮雪乃さんについてどう思われますか?
ベ:あれ?……まぁいいか。ん〜、反応が可愛いかな。本人はクールを気どってるけど、すぐムキになるとことか。
エ:ちびっ子に可愛いって言われるってのは……。
ベ:何か言った?
エ:(焦っている)べ……別にぃ。(激しく焦っている)ベッキーの事ちびっ子なんて言ってないよ、絶対。

(ハリセン一閃)

エ:ぱぁぎゅぅ〜〜〜。言ってないっていってるのにぃ〜。
ベ:少しは学習しろよ。平八郎だっていろいろ学習するぞ。

ベッキーの肩にのっているフェレットが、エリーの視線に対してちょっとだけ反応する)

エ:平八郎クンは、ベッキーといつも一緒にいるフェレット君ですね。いつも動き回っているので、筋肉が締まっていてとても美味しそうです。

(平八郎、危険を感じたのかベッキーの後ろに隠れる)

エ:あ、冗談なのに……。
ベ:……エリー。
エ:ホント、冗談だよ、ジョーダン。……ジョーダンって言えば「マジック」って言われた……。
ベ:……そりゃジョンソンだ。ジョーダンは「エア」
エ:ドリームキャスト版も好評発売中。
ベ:何が?
エ:さぁ。……。ベッキー、私の目を見て。この目はどう見ても、冗談を言っている目に見えるでしょぉ?!
ベ:……いいから、よだれを拭け、よだれ。垂れそうだぞ。

(エリー、ベッキーからハンカチを受け取る)

エ:ありがと……チーン!!
ベ:お約束だな、エリー。あ、返さなくていいから。
エ:……で、何の話だったっけ???
ベ:一応質問コーナーらしかったんだが……。
エ:どこらへんが?
ベ:……。(プチッ!!)
エ:あ、怒ってる?怒ってる……ねぇ?
ベ:……。
エ:……。

(気まずい雰囲気を無視して、せつない系の音楽が流れはじめる)

エ:今回から始まる新コーナーっ!!
ベ:おい、今回が第1回だろ。何回同じネタを……。
エ:ラブポエム検定実践講座ぁー!!!
ベ:ま……まだ続くのか、この番組……。

(続かない)